2026/07/17 09:46
「ビオディナミ製法とはどのような栽培方法なのだろう」「ビオディナミワインは普通のワインと何が違うの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
ビオディナミ製法(ビオディナミ農法)は、自然との調和を大切にしながらぶどうを育てる農法として、世界各地のワイナリーで実践されています。
オーガニック農法の一種と思われることもありますが、天体のリズムを栽培の参考にしたり、「プレパラシオン」と呼ばれる調合剤を活用したりする点など、独自の考え方があることが特徴です。
一方で、「どのような工程でワインが造られるの?」「味わいに違いはあるの?」といった疑問を持つ方も少なくありません。
この記事では、ビオディナミ製法の基本的な考え方から、ワインづくりの工程、味わいの特徴、認証制度までを分かりやすく解説します。
ビオディナミワインを選ぶ際のポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ビオディナミ製法とは?
ビオディナミ製法の基本的な考え方
ビオディナミ製法とは、自然との調和を重視しながらぶどうを栽培する農法です。
化学肥料や化学合成農薬にできる限り頼らず、土壌や植物、本来の生態系を生かした畑づくりを目指します。
また、畑だけでなく周囲の動植物や微生物まで含め、農園全体をひとつの生命体として捉える考え方を大切にしていることも特徴です。
ビオディナミ農法では、土壌環境を整えながらぶどう本来の力を引き出すことを重視しており、その土地ならではの個性(テロワール)をワインへ反映させることを目指す生産者も多く見られます。
ただし、ビオディナミ製法で造られたワインの味わいや醸造方法は生産者によって異なるため、すべてのビオディナミワインが同じ特徴を持つわけではありません。
ビオディナミ製法が生まれた背景
ビオディナミ製法は、1924年にオーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーが行った農業講義をもとに体系化された農法です。
当時は化学肥料の普及が進み、農地の土壌環境や農業の持続性について関心が高まり始めた時代でした。
こうした背景の中で、自然の循環や生命活動を尊重する農業の考え方として、ビオディナミ農法が広まっていきました。
現在ではフランスやイタリア、ドイツをはじめとするヨーロッパだけでなく、日本を含むさまざまな国のワイナリーでも実践されています。
ビオロジックとの違い
ビオディナミ製法と混同されやすいものに、「ビオロジック(有機農法)」があります。
どちらも化学合成農薬や化学肥料にできる限り頼らず、自然環境へ配慮したぶどう栽培を行う点は共通しています。
一方で、ビオディナミ製法では、自然の循環を重視する考え方に加え、プレパラシオンを活用したり、月の満ち欠けなど自然のリズムを栽培の参考にしたりする点が特徴です。
ビオロジックとビオディナミの違いについて詳しく知りたい方は、関連記事もあわせてご覧ください。
▶「ビオロジックとビオディナミの違いとは?製法の特徴を分かりやすく解説」

ビオディナミ製法は「醸造方法」ではなく「栽培方法」
ビオディナミ製法はぶどう栽培の考え方
「ビオディナミ製法」と聞くと、ワインを醸造する方法を指すと思われることがあります。
しかし、ビオディナミ製法はワインの醸造方法ではなく、ぶどうを育てる栽培方法です。
つまり、畑づくりや土壌管理、ぶどうの育成方法に関する考え方であり、ワインを発酵・熟成させる技術そのものを指す言葉ではありません。
そのため、同じビオディナミ製法に取り組むワイナリーであっても、味わいや特徴にはそれぞれ違いがあります。
醸造方法は生産者によって異なる
ビオディナミ製法で育てたぶどうを使用していても、その後の醸造方法は生産者の考え方によってさまざまです。
例えば、野生酵母による発酵を選ぶ生産者もいれば、必要に応じて培養酵母を使用するケースもあります。
また、酸化防止剤(亜硫酸塩)の使用量についても、生産者によって異なります。
このように、ビオディナミ製法は栽培方法を示す言葉であり、「ビオディナミワイン=ナチュラルワイン」というわけではありません。
ワインのスタイルは、ぶどうの品種や産地、醸造方法など、さまざまな要素によって決まります。
ビオディナミ製法によるワインづくりの工程
ビオディナミ製法では、ぶどうを育てる最初の段階から収穫、ワインづくりまで、それぞれの工程で自然との調和を意識した取り組みが行われます。
ただし、実際の栽培方法や醸造工程は生産者や産地によって異なります。
ここでは、一般的なビオディナミ製法によるワインづくりの流れをご紹介します。
① 畑を整え、土づくりから始める
ビオディナミ製法では、健康なぶどうを育てるために、まず土づくりを重視します。
土壌には堆肥を活用し、微生物やミミズなどの生き物が活動しやすい環境づくりを目指します。
また、ぶどう畑の周辺に草花を育てたり、家畜を活用したりすることで、生物多様性にも配慮する生産者も見られます。
このように、畑だけでなく周囲の自然環境も含めて管理することで、土壌本来の力を引き出し、健全なぶどうを育てようとする点がビオディナミ農法の特徴です。
② プレパラシオンを散布する
ビオディナミ製法の特徴としてよく知られているのが、「プレパラシオン」と呼ばれる調合剤を活用することです。
プレパラシオンは、牛の角や薬草、鉱物などの自然由来の素材を用いて作られる調合剤です。
土壌やぶどう樹の健全な生育を支えることを目的として使用され、栽培管理の一つとして取り入れられています。
代表的なものには、土壌へ散布する「500」と、葉面へ散布する「501」があります。
・500:牛角に牛ふんを詰め、一定期間土中で熟成させたプレパラシオンで、土壌環境を整える目的で使用されます。
・501:牛角に粉砕した水晶(シリカ)を詰め、一定期間土中で管理して作られるプレパラシオンで、葉や果実の生育を補助する目的で使用されます。
プレパラシオンの考え方にはさまざまな見解があり、効果についても研究や評価が続けられています。
そのため、ビオディナミ製法では伝統的な農法のひとつとして取り入れられている点を理解しておくとよいでしょう。
③ 天体カレンダーを参考に栽培する
ビオディナミ製法では、月の満ち欠けや天体の動きを参考にしながら農作業を行うことがあります。
その際に活用されるのが、「農事暦(ビオディナミカレンダー)」です。
農事暦では、種まきや剪定、収穫などを行うタイミングの目安が示されており、生産者は栽培計画の参考情報として利用することがあります。
ただし、すべてのビオディナミ生産者が同じように運用しているわけではありません。
実際には、天候やぶどうの生育状況を優先しながら、農事暦を組み合わせて活用するケースも多く見られます。
④ ぶどうを収穫・選果する
収穫の工程では、ぶどうの熟度や健康状態を見極めながら、適切なタイミングで収穫を行います。
品質を保つため、手作業で収穫するワイナリーも多く、傷んだ果実や未熟なぶどうを取り除く「選果」を丁寧に行い、その後の醸造につながる健全な状態の果実を選びます。
収穫時期は気候や品種によって異なるため、一律の基準ではなく、その年のぶどうの状態に合わせて判断されます。
⑤ ぶどう本来の個性を生かして醸造する
収穫したぶどうは、ワイナリーで発酵や熟成などの醸造工程へ進みます。
ビオディナミ製法は栽培方法を指すため、醸造方法に決まりはありません。
しかし、ぶどう本来の個性やテロワールを表現したいという考えから、必要以上に人の手を加えない醸造を選択する生産者もいます。
一方で、品質を安定させるために培養酵母や酸化防止剤(亜硫酸塩)を適切に使用するケースもあり、その考え方はワイナリーによって異なります。
⑥ 熟成・瓶詰めを経て完成する
発酵を終えたワインは、タンクや木樽などで一定期間熟成されます。
熟成期間はワインの種類や生産者の方針によって異なり、フレッシュな味わいを重視して早めに瓶詰めされるものもあれば、時間をかけて熟成されるものもあります。
その後、瓶詰めを経て市場へ出荷され、届けられます。
このように、ビオディナミ製法によるワインづくりは、畑づくりから収穫、醸造、熟成まで、それぞれの工程で自然との調和を意識しながら進められています。
一方で、具体的な栽培方法や醸造方法は生産者ごとに異なるため、同じビオディナミ製法でもさまざまな個性を持つワインが生まれています。
ビオディナミ製法で造られるワインはどのような味わい?
ビオディナミ製法で造られたワインは、「自然な味わい」「個性が豊か」と表現されることがあります。
しかし、ビオディナミ製法はあくまでぶどうの栽培方法であり、味わいを一律に決めるものではありません。
実際の風味は、ぶどう品種や気候、土壌、醸造方法、熟成期間など、さまざまな要素によって異なります。
ここでは、ビオディナミワインで見られることがある味わいの特徴をご紹介します。
果実味を感じるタイプもある
ビオディナミワインには、ぶどう本来の果実味を感じやすいタイプがあります。
例えば、白ワインでは柑橘類や白桃、洋ナシを思わせる風味、赤ワインではベリーやチェリーなどの果実味が感じられるものもあります。
もちろん、すべてのビオディナミワインが同じ味わいというわけではありません。
品種や産地、生産者の考え方によって、軽やかなタイプからしっかりとした味わいまで幅広く造られています。
ミネラル感を表現する生産者もいる
ビオディナミ製法に取り組む生産者の中には、その土地ならではの個性を大切にし、テロワールをワインへ表現することを目指す方もいます。
そのため、産地によっては、石や貝殻を思わせるようなミネラル感や、引き締まった酸味が特徴として感じられる場合があります。
ただし、ミネラル感の感じ方には個人差があり、ワインの品種や醸造方法も大きく影響します。
ビオディナミ製法だけで味わいが決まるわけではありません。
味わいは栽培だけでは決まらない
ワインの味わいは、ビオディナミ製法を採用しているかどうかだけで決まるものではありません。
例えば、次のような要素が組み合わさることで、最終的な味わいが形づくられます。
・ぶどう品種
・土壌や気候などの栽培環境
・収穫時期
・発酵方法や熟成方法
・生産者の醸造方針
そのため、同じビオディナミ製法でも、フレッシュで果実味豊かなワインもあれば、複雑で落ち着いた味わいのワインもあります。
ビオディナミワインを選ぶ際は、「ビオディナミだから○○な味」と考えるのではなく、生産者や品種、産地にも注目すると、自分の好みに合った1本を見つけやすくなるでしょう。
ビオディナミ製法のメリットと知っておきたいポイント
ビオディナミ製法は、自然との調和を大切にした農法として世界各地で取り入れられています。
一方で、一般的な栽培方法とは異なる特徴もあるため、メリットとあわせて知っておきたいポイントをご紹介します。
自然環境への配慮につながる農法とされている
ビオディナミ製法では、土壌や生態系を含めた畑全体の環境を重視します。
化学合成農薬や化学肥料への依存を抑えながら、堆肥やプレパラシオンを活用し、土壌本来の働きを生かす考え方が基本です。
また、畑の周囲に植物を植えたり、生物多様性に配慮した環境づくりを行ったりする生産者も見られます。
こうした取り組みは、持続可能な農業を目指す考え方のひとつとして注目されています。
多くの手間や時間を要する
ビオディナミ製法は、一般的な栽培方法と比べて、多くの手間や時間がかかるとされています。
土壌管理やプレパラシオンの準備、農事暦を参考にした作業計画など、日々の管理を丁寧に行う必要があるためです。
さらに、天候やぶどうの生育状況に合わせて柔軟に対応することも求められることから、生産者には豊富な経験や知識が必要とされます。
必ずしも認証を取得しているとは限らない
ビオディナミ製法に取り組んでいても、すべてのワイナリーが認証を取得しているわけではありません。
認証を取得するには一定の基準を満たす必要があり、審査や維持にも費用や時間がかかります。
そのため、認証を受けずにビオディナミの考え方を実践している生産者もいます。
ワインを選ぶ際は、認証の有無だけでなく、生産者がどのような栽培や醸造を行っているのかにも目を向けるとよいでしょう。
ビオディナミ製法の認証制度
ビオディナミ製法には、代表的な認証制度があります。
認証マークが付いているワインは、定められた基準に基づいて栽培・管理が行われていることを示す目安のひとつです。
ただし、認証がないからといってビオディナミ農法を実践していないとは限りません。
Demeter(デメター)認証
Demeter(デメター)は、世界的によく知られているビオディナミ農法の認証制度です。
ビオディナミ農法の考え方に基づいた栽培方法や農園管理などについて基準が設けられており、それらを満たした生産者が認証を取得できます。
ワインだけでなく、野菜や果物など、さまざまな農産物にも採用されています。
Biodyvin(ビオディヴァン)認証
Biodyvin(ビオディヴァン)は、主にワイン生産者を対象としたビオディナミ認証です。
フランスを中心に、多くのワイナリーが参加しており、ビオディナミ農法の実践状況などをもとに認証が行われています。
ワインに特化した認証制度として知られており、ヨーロッパの生産者を中心に採用されています。
認証がなくてもビオディナミの考え方を実践する生産者もいる
すべてのビオディナミ生産者が認証を取得しているわけではありません。
認証を申請しない理由は、生産者ごとにさまざまです。
例えば、認証取得にかかる費用や手続きの負担を考慮して取得していないケースや、独自の考え方に基づいて栽培を続けているケースがあります。
そのため、「認証があるかどうか」だけで判断するのではなく、生産者の栽培方針やワインづくりへの考え方をあわせて確認することも、ワイン選びの参考になります。
ビオディナミ製法のワインを選ぶ際のポイント
ビオディナミワインは、生産者や産地によって栽培方法や味わいが異なります。
初めて選ぶ場合は、次のポイントを参考にすると、自分に合った1本を見つけやすくなるでしょう。
認証マークを参考にする
ビオディナミ製法のワインを選ぶ際は、Demeter(デメター)やBiodyvin(ビオディヴァン)などの認証マークをひとつの目安にするとよいでしょう。
ただし、認証を取得していない生産者の中にも、ビオディナミの考え方を取り入れて栽培を行っている場合があります。
認証の有無だけで判断せず、あくまで参考情報として活用することが大切です。
生産者の栽培方針を確認する
同じビオディナミ製法でも、生産者によって栽培や醸造に対する考え方は異なります。
例えば、自然な発酵を重視する生産者もいれば、品質の安定性を考慮した醸造を行う生産者もいます。
商品説明や生産者情報を確認すると、ワインの特徴や造り手のこだわりを理解しやすくなるでしょう。
初めてなら専門店で選ぶ方法もある
ビオディナミワインに初めて触れる方は、専門店や専門オンラインショップを利用するのもひとつの方法です。
ぶどう品種や産地、味わいの特徴、生産者の背景などが紹介されているショップであれば、自分の好みに合うワインを選びやすくなります。
ビオディナミ製法のワインを探すならVin X Cellarも選択肢
※本記事には、運営元が販売するオンラインショップ「Vin X Cellar(ヴァンクロス・セラー)」の紹介が含まれます。
Vin X Cellar(ヴァンクロス・セラー)は、ナチュラルワインを専門に扱うオンラインショップです。
畑や生産者の思想がワインに反映されるよう、化学的な薬品や添加物にできる限り頼らず、テロワールを生かしたワインを買い付けています。
ビオディナミ農法に取り組む生産者のワインも取り扱っており、商品の特徴だけでなく、生産者の背景や栽培への考え方も紹介しています。
ビオディナミワインを初めて選ぶ方や、自分に合う1本を探したい方にとって、比較・検討の参考となるでしょう。
ビオディナミ製法に関するよくある質問(FAQ)
Q. ビオディナミ製法は宗教と関係がありますか?
ビオディナミ製法は、ルドルフ・シュタイナーの思想をもとに体系化された農法です。
ただし、現在は農法として実践している生産者が多く、宗教活動を目的とするものではありません。
Q. ビオディナミ製法はオーガニック農法と同じですか?
どちらも自然環境に配慮した栽培方法ですが、ビオディナミ製法にはプレパラシオンの活用や農事暦を参考にする考え方など、独自の特徴があります。
Q. プレパラシオンとは何ですか?
プレパラシオンとは、牛の角や植物などの自然由来の素材を用いて作られる調合剤です。
ビオディナミ製法では、土壌やぶどう樹の健全な生育を支えることを目的として活用されています。
Q. ビオディナミ製法のワインは高価ですか?
手間のかかる栽培方法であることから、高価格帯の商品もあります。
一方で、比較的手に取りやすい価格のビオディナミワインも販売されており、価格帯は生産者や産地によってさまざまです。
Q. ビオディナミ製法のワインは初心者にもおすすめですか?
ビオディナミ製法だから特別に飲みにくいということはありません。
味わいはぶどう品種や醸造方法によって異なるため、果実味豊かなタイプなど、自分の好みに合ったワインを選ぶことが大切です。
まとめ:ビオディナミ製法は自然との調和を大切にしたワインづくり
ビオディナミ製法は、自然との調和を重視しながらぶどうを育てる栽培方法です。
土づくりからプレパラシオンの活用、農事暦を参考にした栽培、収穫、醸造、熟成まで、それぞれの工程で自然の力を生かす考え方が取り入れられています。
一方で、ワインの味わいはビオディナミ製法だけで決まるものではなく、ぶどう品種や産地、醸造方法など、さまざまな要素によって異なります。
そのため、認証の有無だけでなく、生産者の栽培方針やワインづくりへの考え方にも目を向けることで、自分に合った1本を見つけやすくなるでしょう。
自然との調和を大切にしたワインづくりに興味を持った方は、生産者の背景や味わいの特徴も参考にしながら、自分に合った1本を探してみてはいかがでしょうか。
