2026/04/03 07:13
フランスのワイン産地といえば、ボルドーやブルゴーニュを思い浮かべる方が多いかもしれません。
一方で、近年ワイン愛好家やナチュラルワイン愛好家の間で注目されつつあるのが、コルシカ島ワイン(AOP Ajaccio)です。
豊かな自然環境と伝統的栽培により、個性的でナチュラルな味わいが楽しめるワインとして注目され始めています。
地中海に浮かぶコルシカ島では、本土ではあまり見られない独自のブドウ品種が古くから栽培されてきました。
海に囲まれた気候と花崗岩質の土壌の影響を受け、個性的で土地の個性が感じられるワインが造られています。
今回ご紹介するドメーヌ・マルティニ(Domaine Martini)は、コルシカ島アジャクシオ近郊にあるワイン生産者です。
17世紀から続く家族経営のドメーヌで、自然環境を生かした栽培と、コルシカの地場品種を使ったワイン造りを行っています。
羊とともに管理される畑や、昔ながらの方法を生かした醸造など、このドメーヌには土地の個性を感じさせる特徴があります。
この記事では、ドメーヌ・マルティニの歴史や畑の環境、ワイン造りの特徴について分かりやすくご紹介します。
コルシカワインの魅力を知るきっかけとして、ぜひ参考にしてみてください。
ドメーヌ・マルティニとは|コルシカ島アジャクシオのワイナリー
コルシカ島アジャクシオにある家族経営のワイナリー
地中海に浮かび、豊かな自然に囲まれたコルシカでは、本土とは少し違う個性を持つワインが造られています。
島ならではのブドウ品種が使われていることも特徴のひとつです。
そのコルシカ島にある町がアジャクシオです。
この町は、ナポレオンが生まれた土地としても知られています。
海に近いこの地域では、暖かい気候と海から吹く風の影響を受けながらブドウが育ちます。
ドメーヌ・マルティニ(Domaine Martini)は、そんなアジャクシオの東側にあるコロ村に拠点を置くワイナリーです。
家族で運営されており、コルシカの地元品種のブドウを使ったワインを造っています。
ドメーヌが所有する土地はおよそ70ヘクタールと広大ですが、そのうち約18ヘクタールがブドウ畑です。
残りの土地では羊を育てており、農業と牧畜が一体となった昔ながらの農場の風景が広がっています。
自然とともに歩んできたこのワイナリーでは、土地の特徴を生かしたワイン造りが続けられています。
17世紀から続くマルティニ家のワイン造り
ドメーヌ・マルティニの歴史は、17世紀までさかのぼります。
マルティニ家はイタリアにルーツを持つ家系で、当時イタリアの影響下にあったコルシカ島に移り住みました。
その後、アジャクシオ周辺で農業を始め、現在のドメーヌの基礎を築いたと伝えられています。
この農場ではブドウ栽培だけでなく、羊の飼育も行われています。
羊のミルクからはコルシカ特産のフレッシュチーズ「ブロッチュ」が造られています。
また、マルティニ家では祖先の代から、農薬や化学肥料、除草剤に頼らない栽培が続けられてきました。
自然の環境を大切にしながらブドウを育てることを、長い間守り続けてきたのです。
現在は、孫世代にあたるピエール・アンドレ氏とピエール・ルイ氏がドメーヌの運営を引き継いでいます。
さらに、ボルドーのワイナリーで経験を積んだ醸造家ジル・ヴェイシエル氏もチームに加わり、伝統を守りながらワイン造りを行っています。
こうした家族の歴史と土地への理解が、ドメーヌ・マルティニのワインの個性につながっています。

コルシカの自然環境とドメーヌの畑
海風が吹くコルシカの畑
ドメーヌ・マルティニのブドウ畑は、アジャクシオの東側にある丘陵地に広がっています。
畑の標高はおよそ150〜300メートル。
海からは約8キロほどの距離にあり、地中海から吹く風の影響を受けながらブドウが育ちます。
夏のコルシカは気温が高く、40℃を超える日もあるとされています。
しかし朝晩には涼しい海風が吹き、気温が大きく下がることもあります。
この昼夜の温度差が、ブドウの糖度や酸味のバランスに影響を与えると考えられています。
土壌は花崗岩を中心とした砂質土壌です。
水はけがよく、ブドウの根は地中深くまで伸びていきます。
雨が少ない年でもブドウが育つのは、この深い根のおかげだといわれています。
ブドウの収穫量は比較的少なく、平均で1ヘクタールあたり15〜20ヘクトリットルほどです。
量よりも品質を重視した栽培が行われています。
羊とともに行う自然な栽培
このドメーヌの特徴のひとつが、羊を活用した畑の管理です。
冬から春にかけて、飼育している羊をブドウ畑に放します。
羊は畑の雑草を食べるため、自然な形で草の管理が行われるのです。
さらに、羊が畑を歩くことで土が適度に耕され、自然な肥料も畑に戻ります。
機械や除草剤に頼らない、昔ながらの農業の知恵といえるでしょう。
このような方法により、ドメーヌでは長い間、農薬や化学肥料を使わない栽培が続けられてきました。
自然環境を生かしたブドウ造りが、ワインの個性にもつながっています。
コルシカならではのブドウ品種
ドメーヌ・マルティニのワインには、コルシカで古くから栽培されてきたブドウ品種が使われています。
特に中心となるのがシャカレロ(Sciaccarellu)とニエルチオ(Niellucciu)という赤ワイン用の品種です。
シャカレロはやわらかい果実味とスパイスのような香りが特徴とされ、ニエルチオはワインに骨格を与える品種として知られています。
これにサンソーが少量加わることで、味わいのバランスが整えられます。
こうした地元品種を中心に造られるワインは、コルシカならではの個性を感じさせるものといえるでしょう。
自然酵母と伝統的手法で造るコルシカ島のナチュラルワイン
ドメーヌ・マルティニでは、醸造工程でも自然酵母を活用した伝統的なワイン造りが行われています。
収穫はすべて手作業で行われ、畑で選別されたブドウがワイナリーへ運ばれます。
ドメーヌ・マルティニでは、人工酵母を加えず、ブドウに付着している自然酵母で発酵させます。
この工程では開放式のコンクリートタンクを用い、温度が安定しやすくゆっくりと発酵が進むよう工夫されています。
赤ワインの特徴のひとつが、複数の品種を一緒に発酵させる「混醸」という方法です。
ドメーヌ・マルティニでは主にシャカレロ、ニエルチオ、サンソーを同時に仕込みます。
品種ごとに別々に仕込む方法も試したことがあるそうですが、混醸のほうが味わいにまとまりが出ると考えられています。
さらに一部のワインでは「シャポー・イメルジェ」という方法が使われます。
タンクを満たした果汁の中に果皮を残し、専用の筒を入れることで液体の対流を起こす仕組みです。
この方法により、果実の成分がゆっくりとワインに溶け込んでいきます。
熟成も主にコンクリートタンクで行われ、最低でも2年ほど置かれてから出荷されます。
赤ワインは基本的にフィルターをかけずに瓶詰めされることも特徴です。
コルシカの自然を感じる味わいの特徴
ドメーヌ・マルティニのワインは、地中海の気候を思わせる果実味が特徴とされています。
赤ワインでは赤い果実の香りに加え、スパイスやハーブを思わせるニュアンスを楽しめることがあります。
こうした風味は、シャカレロやニエルチオといったコルシカ地場品種や海に近い環境で育ったブドウの影響によるものと考えられます。
また、収穫量を抑えた栽培によって、ブドウの風味がワインにしっかりと表れやすくなります。
まとめ:コルシカの土地を映すワイン
ドメーヌ・マルティニは、コルシカ島の自然環境と長い家族の歴史の中でワイン造りを続けてきた生産者です。
海風が吹く畑、羊を活用した農業、地元品種を使ったワイン造りなど、土地に根ざした取り組みが今も守られています。
フランス本土の有名産地とは少し違う個性を持つコルシカワインは、ワインの世界を広げてくれる存在のひとつともいえるでしょう。
地中海の自然を感じるワインを探している方にとって、ドメーヌ・マルティニは興味深い生産者のひとつかもしれません。
コルシカならではのブドウ品種と伝統的な造りから生まれる味わいに興味がある方は、ドメーヌ・マルティニのワインを味わってみるのもよいでしょう。
地中海の自然を感じる1杯が、ワイン体験をより豊かにしてくれるかもしれません。

