2026/02/20 08:29

ブルゴーニュの中でも力強さと奥行きを兼ね備えた産地として知られるジュヴレ・シャンベルタン。
その個性を、できる限り自然なかたちで表現しようとする生産者がいます。

ドメーヌ・アラン・ビュルゲ(Domaine Alain Burguet)は「ピノ・ノワールをピュアに表現する」ことを軸にワイン造りを続けてきました。
過度な抽出や演出に頼らず、土地とヴィンテージの特徴を素直に映し出す姿勢が特徴とされています。

近年、ブルゴーニュでも有機・ビオディナミ栽培への関心が高まっていますが、ドメーヌ・アラン・ビュルゲは比較的早い段階から自然な農法に取り組んできました。
本記事では、その歩みや栽培・醸造の考え方、そして現当主の哲学までを整理します。
ジュヴレ・シャンベルタンの新たな側面を知りたい方にとって、ひとつの視点になるでしょう。

ドメーヌ・アラン・ビュルゲの歴史と現在

ドメーヌ・アラン・ビュルゲは1974年、アラン・ビュルゲ氏によって設立されました。
創業当初の畑は2.1haで、家族経営の小さなドメーヌとしてスタートします。
その後、畑を少しずつ取得しながら規模を拡大し、現在は約7haを所有しています。

このドメーヌの特徴のひとつが、有機的アプローチの早さです。
1977年からリュット・レゾネを実践し、2009年にビオロジックへ転換。
さらに2012年からはビオディナミ農法へ移行しました。
認証取得そのものよりも、畑での実践を重視してきた点が特徴です。


栽培|ビオディナミ農法と低収量の考え方

ドメーヌ・アラン・ビュルゲの畑では、除草剤や防腐剤を使用していません。
有機肥料のみを用い、剪定はギュイヨ・サンプルで行われています。
こうした取り組みは一時的な流行ではなく、長年積み重ねられてきた実践です。

平均収量は28〜30hl/haと比較的低めです。
ただし、極端に収量を抑えること自体を目的としているわけではありません。
所有区画に古樹が多いため、結果として自然な低収量となっています。
これ以上に収量を落とすと、ぶどうの生育バランスを損なう可能性があると考えています。

収量を単に減らせば品質が上がる、という単純な発想ではありません。
ぶどう樹の状態を見極めながら、その年にとって適切な姿を保つことを重視しています。
この姿勢が、ヴィンテージごとの個性を素直に反映する土台となっています。

醸造|自然酵母と無清澄・無濾過という選択

醸造でも人的介入はできる限り抑えられています。
収穫後のぶどうは100%除梗し、軽く破砕されます。
その後、自然酵母のみで発酵を行います。

補酸や補糖はせず、発酵初期の温度調整も積極的には行いません。
自然に始まる発酵を待つことで、酵母由来の複雑な香りを引き出しやすくしています。

発酵期間は約2〜3週間。抽出は控えめで、ピジャージュも最低限です。

熟成はアリエ産の樽で20〜24ヶ月行われます。
瓶詰め前に澱引きを行い、無清澄・無濾過で瓶詰めします。

現当主ジャン・リュック・ビュルゲの哲学

現在ドメーヌを率いるのは、ジャン・リュック・ビュルゲです。
ボーヌの醸造学校で農業適正資格(CAP)を取得し、栽培と醸造の基礎を体系的に学びました。

その後、カリフォルニアのオー・ボン・クリマや、ブルゴーニュのドメーヌ・ドニ・バシュレで研修を経験します。
異なる土地での醸造を学んだことは、視野を広げる機会になりました。

1997年にドメーヌへ参画し、2009年に初醸造。
2010年がジャン・リュックのファーストヴィンテージです。
2011年に正式に所有権を引き継ぎ、現在に至ります。

彼が大切にしているのは「ヴィンテージの個性を尊重する」という姿勢です。
毎年同じ味わいを目指すのではなく、その年の気候や熟度を受け止めながらワインを仕上げます。
父アランの思想を受け継ぎながらも、現代的な視点を加えたバランスが特徴です。

ドメーヌ・アラン・ビュルゲのワインの特徴

ビュルゲのワインは、ジュヴレ・シャンベルタンらしい骨格を備えながらも、過度な重さを感じさせません。
果実の輪郭が明確で、タンニンはきめ細かく、しなやかな構造を持ちます。

ピノ・ノワールの純度を重視する造りのため、香りは赤系果実を中心に、ヴィンテージごとのニュアンスが素直に現れます。
抽出を抑えていることから、透明感のある質感が感じられます。

また、無清澄・無濾過で瓶詰めされるため、ワイン本来の構成要素が保たれています。
力強さと繊細さの両立こそが、ドメーヌ・アラン・ビュルゲの持ち味といえるでしょう。

まとめ:ドメーヌ・アラン・ビュルゲが示す“自然と土地の表現”

ドメーヌ・アラン・ビュルゲは、栽培と醸造の両面で一貫した哲学を持つ生産者です。
ビオディナミ農法の実践、自然酵母での発酵、無清澄・無濾過という選択。
そのすべてが「ピノ・ノワールをピュアに表現する」という哲学に結びついています。

ジュヴレ・シャンベルタンという伝統ある産地において、自然なアプローチで個性を引き出す姿勢は、ひとつの方向性を示しています。
ヴィンテージごとの違いを受け入れながら味わうことで、このドメーヌの個性をより実感しやすくなります。

ブルゴーニュのピノ・ノワールを探求したい方にとって、ドメーヌ・アラン・ビュルゲは理解を深める上で参考になる生産者の1人です。
土地と年の個性を映し出すワインに関心がある方は、そのスタイルに触れてみる価値があるでしょう。