2026/02/13 10:43

ナチュラルワインへの関心が高まる中で「自然な造り」と「ブルゴーニュらしさ」をどう両立させているかに注目する方も増えています。
今回ご紹介するDomaine Chandon de Briailles(ドメーヌ・シャンドン・ド・ブリアイユ)は、そうした視点から見ても興味深い生産者です。

1834年創設という長い歴史を持ちながら、畑や醸造を時代に合わせて見直し、現在はビオディナミ農法を取り入れたワイン造りを行っています。
派手さよりも、土地と向き合う姿勢を大切にしてきたその歩みは、ブルゴーニュの本質を知りたい方にとって、ひとつの指標になる存在と言えるでしょう。

本記事では、シャンドン・ド・ブリアイユの歴史や栽培、醸造の考え方を整理しながら、そのワインがどのような特徴を持つのかを分かりやすくご紹介します。

コート・ドールの代表的な生産者のひとつ|シャンドン・ド・ブリアイユ

シャンドン・ド・ブリアイユは、コート・ドール南部に本拠を置く生産者です。
ワイン専門誌『Revue du Vin de France(RVF)』の2021年版ガイドにおいて、3つ星評価を獲得したことでも知られています。

この評価は、単にできの良いヴィンテージがあったから、という理由だけで与えられるものではありません。
長年にわたり安定した品質を保ち、土地の個性を表現し続けてきた生産者であることが前提になります。

シャンドン・ド・ブリアイユの場合、評価の背景にあるのは、極端な流行に寄らず、畑と真摯に向き合い続けてきた姿勢です。
その積み重ねが、現在の評価につながっていると考えられています。


1834年設立、200年近い歴史を持つドメーヌ


名門の系譜とサヴィニー・レ・ボーヌという土地
ドメーヌ・シャンドン・ド・ブリアイユは、1834年にアイマール・クロード・ド・ニコライ伯爵によって設立されました。
創設の背景には、祖母にあたるシャンドン・ド・ブリアイユ伯爵夫人からの継承があります。

本拠地は、ブルゴーニュのサヴィニー・レ・ボーヌ。
現在は約13.7haの畑を所有し、平均年間生産量はおよそ5万本。そのうち約6割がフランス国外へ輸出されています。

現在ドメーヌを率いるのは、当主であるフランソワ・ド・ニコライ氏。
彼が2001年に継承して以降、シャンドン・ド・ブリアイユのワインは、より一層評価を高めていくことになります。

畑から見直したワイン造りへの転換


1980年代に始まった「問い直し」
シャンドン・ド・ブリアイユが現在のスタイルへと向かうきっかけは、1980年代初頭にありました。
当時は、多くの生産者が除草剤や殺虫剤などの化学薬品を使用した栽培を行っていました。
一方でドメーヌでは、こうした方法がぶどうそのものに負担をかけている可能性があるのではないかと考えるようになります。

そこで、栽培における各工程を一から見直し、薬剤の使用は「本当に必要と判断される場合」に限る方針へと転換しました。
硫酸銅についても、使用量を段階的に減らし、恒常的な散布は行わない姿勢を貫いています。

この時点では、いわゆる自然派を標榜していたわけではありません。
あくまで、畑の状態とぶどうの健全さを最優先に考えた結果としての選択でした。

ビオディナミへの移行と現在の栽培
2001年にフランソワ・ド・ニコライ氏がドメーヌを継承してから、栽培の方向性はさらに明確になります。
彼は、畑の生命力を引き出す方法としてビオディナミ農法への転換を決断しました。

2005年以降、すべての所有畑で除草剤や殺虫剤を使用しない栽培を実践しています。
外部から人為的にコントロールするのではなく、土壌が本来持つ力によってぶどうが育つ環境を整える考え方です。

この結果、収量は自然と抑えられ、グリーンハーヴェストのような人為的な調整を行う必要もなくなりました。
地中深くまで伸びた根が、ミネラルや栄養分を吸収することで、ワインに奥行きが生まれるとされています。

こうした取り組みが評価され、2011年にはAgriculture Biologique(AB)およびDemeterの認証を取得しました。

ブルゴーニュ新古典主義と呼ばれる醸造スタイル


伝統を尊重しながら、現代的な管理を取り入れる
シャンドン・ド・ブリアイユの醸造は、しばしばブルゴーニュにおける「新古典主義」と表現されます。
これは、昔ながらの伝統手法を尊重しつつ、現代の醸造学がもたらす利点を適切に取り入れる姿勢を指します。

赤ワインは、厳しい選果を行った後、除梗せずにコンクリートタンクや開放桶で発酵されます。
補酸を含む添加は行わず、使用されるのは必要最低限の亜硫酸のみです。

収穫されたブドウの温度が高い場合には、急激な発酵を避けるため、時間をかけて18度まで冷却します。
これにより、果実が持つ繊細な香りを損なわないよう配慮されています。

無清澄・無濾過が可能になる理由
シャンドン・ド・ブリアイユでは、発酵後のワインを急いで仕上げることはせず、時間をかけて自然に落ち着かせていきます。
不要な成分がゆっくりと沈むのを待ちながら、ワイン本来のバランスが整うのを重視しています。

熟成は地下のセラーで行われ、香りを強く付けすぎない古樽を使用。
段階を分けて丁寧に熟成させることで、余分な処理を加えなくても安定した状態になります。

そのため、清澄や濾過に頼らず、ぶどうや土地の個性を保ったまま瓶詰めすることが可能になります。

シャンドン・ド・ブリアイユのワインが持つ特徴

シャンドン・ド・ブリアイユのワインは、きめ細かさと奥行きが印象に残ります。
果実味、酸、ミネラル感が一体となり、飲み進める中で少しずつ表情が変わっていきます。
食事と合わせながらゆっくり味わうことで、ブルゴーニュらしいバランスの良さを実感しやすいスタイルです。

土地やぶどうの個性を大切にしながらも、味わいはあくまで穏やかで、料理との相性も考えられています。
そのため、ナチュラルワインをこれから知りたい方にとっても、取り入れやすい存在と言えるでしょう。

まとめ:伝統と自然が重なり合う、シャンドン・ド・ブリアイユという選択

ドメーヌ・シャンドン・ド・ブリアイユは、ブルゴーニュの伝統を大切にしながら、畑や醸造を丁寧に見直してきた生産者です。
ビオディナミ農法を取り入れつつも、極端な表現に寄らず、土地の個性を穏やかに映し出すワイン造りを続けています。

その姿勢は、きめ細かさや奥行きのある味わいとしてワインに表れ、時間をかけて向き合う楽しさを教えてくれます。
ワイン選びに背景やストーリーを求める方にとって、シャンドン・ド・ブリアイユはひとつの指標となり得る存在です。

Vin X Cellar(ヴァンクロス・セラー)では、こうした造り手の考え方や積み重ねを大切にしながら、ワインをセレクトしています。
1本のワインを通じて、生産者の世界観に触れてみたいと感じた方にとって、本ドメーヌはそのきっかけになるでしょう。