2026/02/13 10:43

スイスワインは、生産量が限られていることもあり、日本ではまだ出会う機会の少ない存在です。

一方で、アルプスの麓という独自の環境を生かし、土地の個性を意識したワイン造りを行う生産者がいることも、徐々に注目されるようになってきました。


ドメーヌ・シャパーズは、スイス南部ヴァレー地方に拠点を構える生産者です。

本記事では、ドメーヌ・シャパーズの背景と、ワイン造りの軸となる考え方を中心にご紹介します。


ドメーヌ・シャパーズとは│ヴァレー地方に受け継がれてきた場所と時間

ドメーヌ・シャパーズは、スイス南部ヴァレー州のFully(フュリィ)に本拠を置いています。

この地に建つ邸宅は、かつては著名人を招く場として使われ、ワインカーヴとしても使われていました。


当主マリ・テレーズ・シャパーズの大叔父にあたる人物は、ヴァレー州議会の議長を務めた存在であり、文化人との交流も深かったと伝えられています。

現在リリースされているキュヴェの中には、その大叔父への敬意を込めて名付けられたものもあり、ドメーヌのワインは家族の記憶とも結びついています。

マリ・テレーズ・シャパーズの歩み│畑を引き継いだことから始まったワイン造り

マリ・テレーズ・シャパーズは、最初からワイン造りを志していたわけではありません。

若い頃は助産師を目指して学んでいましたが、17歳のとき、父から一部の畑を引き継ぐことになります。

自分で管理することを条件に任されたその畑が、彼女がワイン生産者として歩み始めるきっかけとなりました。


その後、地元の生産者のもとで経験を積み、栽培と醸造を学ぶための学校を修了します。

州立の醸造所で働きながら、自身の畑の手入れも続ける日々は、容易な道のりではなかったとされています。


1988年に初めて自ら醸造までを行い、翌1989年にはドメーヌを正式に立ち上げました。

当初は1.5ヘクタールほどだった畑は、時間をかけて少しずつ増え、現在では約10ヘクタールを管理しています。


土地の個性を大切にするための考え方│ビオディナミに行き着いた理由

ドメーヌ・シャパーズのワイン造りを語る上で欠かせないのが「土地を愛し、テロワールとぶどうを尊重する」という考え方です。


畑では、人工的な薬剤や肥料に頼らず、植物や土の状態を見ながら手入れを続けています。

1990年代後半には、より環境に配慮した栽培方法としてビオディナミ農法を取り入れ、2000年代初頭にはすべての畑でこの方法に移行しました。

醸造においても、必要以上に手を加えることはせず、自然な発酵を基本としています。


Fullyに広がる畑とその表情│斜面や土壌が生む違い

ドメーヌ・シャパーズの中心となる畑は、Fully周辺の斜面に点在しています。

花崗岩を基盤とした土地が多く、場所によっては風によって運ばれた土が重なり、区画ごとに異なる表情を見せます。


急な斜面に広がる区画では、水はけが良く、引き締まった印象のワインが生まれやすいとされています。

一方で、比較的なだらかな場所では、やわらかさや広がりを感じさせる味わいになることもあります。


プティット・アルヴィーヌやファンダンといった、この地域を象徴する品種が育てられているのもFullyの特徴です。

同じ品種でも、畑の位置や条件によって表情が変わる点は、飲み比べることで違いを感じ取りやすい点のひとつといえるでしょう。


シャラとシャモソンの畑│ピノ・ノワールが見せる別の一面

Fullyとは別に、ローヌ川左岸に位置するシャラやシャモソンにも畑を所有しています。

これらの区画は石灰質土壌が主体で、日照や風の当たり方も異なります。

この環境はピノ・ノワールの栽培条件と相性が良いとされており、繊細さや透明感を感じさせるスタイルにつながっているとされています。


ドメーヌ・シャパーズのワインの楽しみ方│土地を感じながら味わうという選択

ドメーヌ・シャパーズのワインには、品種や畑、年ごとの違いをゆっくりと感じ取る楽しみがあります。

食事と合わせる際は、素材の味を生かした料理となじみやすいとされています。

あまり構えずに向き合うことで、土地の空気感が少しずつ伝わってくるかもしれません。


Vin X Cellar(ヴァンクロス・セラー)で出会えるドメーヌ・シャパーズのワイン

スイスワインは国内での流通量が限られており、実際に手に取る機会は多くありません。

ドメーヌ・シャパーズのワインも同様で、常に豊富にそろっているわけではないのが現状です。


Vin X Cellarでは、こうした背景を持つ生産者のワインを、タイミングに応じて取り扱っています。

造り手の考えや畑の特徴を知った上で選ぶことで、ワインとの向き合い方が少し変わることもあるでしょう。


まとめ:ドメーヌ・シャパーズから知るスイス・ヴァレーのワイン

ドメーヌ・シャパーズは、スイス・ヴァレー地方の土地と向き合い続けてきた生産者です。

畑の個性を尊重し、歩みを重ねてきた結果が、現在のワインにつながっています。


生産背景を知ることで、グラスの中の味わいに奥行きを感じられることもあります。

スイスワインを知る入り口として、ドメーヌ・シャパーズは静かに寄り添ってくれる存在になり得るでしょう。