2025/10/21 08:34

近ごろ、ワイン好きのあいだで「ビオディナミ」という言葉を耳にする機会が増えています。

ナチュラルワインやオーガニックワインと並んで紹介されることも多く「自然に寄り添った造り方」というイメージを持つ方もいるでしょう。

しかし「ビオディナミ」とは具体的にどのような農法なのか、どのような考え方に基づいているのかを、知っている人はまだ少ないかもしれません。
ビオディナミとは、単に化学肥料を使わないというだけでなく、自然のサイクルや天体の動きまでも取り入れた、独自の哲学を持つ農法なのです。

この記事では、ビオディナミ農法の基本的な考え方から、いま注目されている理由、そしてワインの味わいにどのような影響を与えるのかまで分かりやすく解説します。
知っておくと、次にグラスを傾けるとき、ワインの世界が少し広がるかもしれません。

1章 ビオディナミ農法とは?

自然と宇宙のリズムに寄り添う農業

「ビオディナミ(Biodynamie)」は、1920年代に哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した農法で、英語では「バイオダイナミック」と呼ばれます。

太陽や月、惑星の動きなど、天体のリズムに合わせて種まきや収穫の時期を決めるのが特徴です。

自然の力を活かす栽培方法

ビオディナミ農法では、化学肥料や農薬を使わず、畑本来の力を高めることを目的としています。

牛の角に牛糞を詰めたもの(500番)や同じく水晶を詰めたもの(501番)を土中に埋めて発酵させた、プレパラシオンと呼ばれる自然由来の調合剤を少量まくことで、微生物の働きを活性化させたり、光合成を促したりして自然な循環を促します。

この結果、健全な土壌環境が整い、ブドウが持つ生命力を引き出せる可能性があると考えられています。

オーガニックとの違い

オーガニック農法が「化学物質を使わないこと」を重視するのに対し、ビオディナミは「自然との調和」をより深く意識しています。

畑をひとつの生命体として捉え、すべての要素がつながり合うことを目指す点が大きな特徴です。

そのため、単なる有機栽培を超えた“哲学的な農業”ともいわれています。

 

世界中でビオディナミ農法を導入するワイナリーが増えており、土地や気候の個性を活かす手法として注目されています。

次章では、なぜこの農法が世界的に支持されているのかを見ていきましょう。

2章 ビオディナミ農法はなぜ注目されているのか?

持続可能な農業への関心の高まり

近年、環境保全やサステナブルな社会への関心が高まっています。
その流れの中で、自然の力を活かすビオディナミ農法が注目されています。
化学肥料を使わず、土地の生命力を守りながら次世代へつなぐ考え方が、多くの人に共感を呼んでいるのです。

自然と調和する哲学

ビオディナミ農法は、単なる栽培方法ではなく、自然と調和して生きる哲学でもあります。
月や太陽など、天体のリズムに合わせて作業を行うことで、自然のサイクルとともに畑を育てます。
この姿勢は「自然を尊重しながら造る」という造り手の思いを象徴しています。

世界に広がる実践

ヨーロッパを中心に広まったビオディナミ農法は、現在では日本を含む世界各地で取り入れられています。
特にワインの分野では、土地の個性を生かしたブドウづくりに役立つとして注目されています。

 

このように、ビオディナミ農法は環境への配慮と自然への敬意を両立する取り組みとして、多くの造り手や飲み手に支持されているのです。
次の章では、こうした農法がワインの味わいに与える影響を見ていきましょう。

 

3章 ビオディナミ農法がワインに与える影響

自然のリズムが生む個性

ビオディナミ農法では、土壌や植物が持つ本来の力を大切にします。
その結果、ブドウの味わいにも畑の特徴がより表れやすいと考えられています。
造り手のあいだでは、「土地の個性(テロワール)」をより純粋に表現できるという声もあるのです。

味わいに見られる傾向

ビオディナミで育てられたブドウから造られるワインは、一般的に香りが豊かで、生き生きと感じられることもあります。
酸味や果実味のバランスが自然で、やわらかな口当たりに仕上がることも。
ただし、味の感じ方は造り手や飲み手によって異なり、一概に特徴を断定することはできません。

ワインを深く楽しむために

ビオディナミの背景を知ることで、ワインを選ぶ楽しみはより広がるでしょう。
ラベルに「Demeter(デメター)」や「Biodivin(ビオディヴァン)」などの認証マークがあるものは、その理念に基づいて造られた証です。
味わいの違いを感じながら、自分の好みに合う1本を見つけるのも魅力のひとつといえます。

まとめ:ビオディナミが広げるワインの楽しみ方

ビオディナミ農法は、単なる栽培技術ではなく、自然とともに生きるという哲学に基づいた考え方です。
太陽や月の動き、土壌の生命力など、自然のリズムを尊重する姿勢が、多くの造り手に受け継がれています。

この農法で育ったブドウから造られるワインには、土地や気候の個性が素直に表れるといわれます。
その味わいを通して、自然の恵みや造り手の想いを感じ取れるのも、ビオディナミワインの魅力のひとつです。 

 

自分の感覚で「心地よい」と感じる1本を探してみるとよいでしょう。

ビオディナミの哲学に触れることは、ワインを味わう上での新しい視点につながります。
自然のリズムに耳を傾けながら、グラスの中の世界をゆっくり楽しんでみてください。

 

当店おすすめのワイン3選 編集部セレクト:おすすめワイン3本